2005年7月13日

今日はようやく晴れましたが、日本の夏と違って、湿気は低く秋のような天気です。ドイツでは、洗濯物を家の中に干していても、あっという間に乾いてしまいます。(ふつう都市部では、洗濯物を屋外に干すことは禁止されているようです)雨の日に家の中で洗濯物が乾くというのは、大変便利です。

また、雨に濡れても、電車などに乗っている内に、すぐ乾きます。私はじつは日本の夏の蒸し暑さが苦手で、神戸で事件記者をしている頃には、暑さでまいりました。当時はペットボトル入りの水やお茶という便利なものもなく、私は夏になるとタオルを持ち歩いて取材していました。

ある時、明石市で強盗事件が発生しましたが、朝日放送と毎日新聞社の取材ヘリが空中で衝突して墜落するという珍しい事故が起きました。私はタクシーで現場へ向かっていましたが、現着したところ、警察官が「ヘリが落ちた、ヘリが落ちた」と無線機に向けて叫んでいました。実際、現場周辺にはローターなど、ヘリの部品が散乱していたほか、ヘリから漏れた航空機燃料の刺激的な匂いが、一帯に充満していました。

顔見知りの機動捜査隊の警視が顔をこわばらせて、「危ないから下がれ下がれ」と怒鳴っていました。やはり機捜は現場に来るのが早いなあと思いながら、一瞬私の脳裏を、静岡市で起きた、ガス爆発事故の映像が、かすめました。この時にはNHKの記者も爆発に巻き込まれて、重傷を負いました。

幸い明石では航空燃料は爆発せず、大災害にはなりませんでしたが、毎日新聞社のヘリに乗っていた人たちは全員死亡しました。

強盗だけならば、ローカルのべた記事どまりのニュースが、ヘリ墜落によって、全国版にのし上がってしまったのです。

昼飯を食う間もなく、夜まで現場での取材と中継に追われました。この事故が起きたのは、7月か8月の暑い盛りで、夕方の撤収時になって、着ていた背広とズボンが汗でぐっしょりと濡れて、重くなっているのに気がつきました。背広は乾くと、真っ白に塩を吹きました。

この時、県警本部からやってきて、現場にかなり遅く着いた共同通信のT記者は、なんと周辺の住民から「あのう、ヘリがぶつかった瞬間が映っていると思うのですが」と話しかけられました。びっくりしてフィルムを借り、現像したところ、本当に朝日放送のヘリのローターが、毎日新聞社のヘリのテール・ローターを切断した瞬間が映っていたのです。

警察も証拠として欲しがるほどの、航空史上にも例がない、超特ダネで、Tさんは社長賞をもらったそうです。現場に遅く着いても、とんだ宝物が見つかることがあるものですね。

夏になるとあのケロシン臭いヘリ墜落現場と、絞ると汗が出てきそうな、背広を思い出すのです。